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まだか、まだか、と、不安の入り交じった気持ちは、じりじりと高ぶる。父の緊急入院から、はや2年近く、その間、ほんの数時間、たった1度だけ、家に帰れたものの、あとは絶対安静の容態が虚しく続いた。
そんな中、どうしても犬に会わせてあげたい!と、懇願した甲斐あって、病院のスタッフの方の配慮で、ようやくと、この日を迎えることが出来たのだ。
なんせ、この犬の鼓太郎、ふさぎ込み、家に閉じ込もりがちだった父を散歩にまで連れ出すのに成功した強者で、10年に及ぶ闘病生活を支えてきた相棒なのだから。
やがて、カタカタと、力ない車椅子の音と共に、4人もの看護士さんに、付き添われた父が病院の入口に姿を見せてくれた。
いつもは、ちぎれんばかりに尻尾を振って、飛びつく鼓太郎。でも、今日は、明らかに違う。恐る恐る「触れてもいいものか・・・・」と、犬なりに、躊躇している様子。ただ、ただ労りの目で見守る犬の指先には、どうか届いてくれとばかりに、おぼつかない手を懸命に這わせる父がいて、それを見た私は、「時間が止まってくれれば!」と、あり得ないことを切に願っていた。端から見れば、切ない時間だったかもしれない。
でも、私にとっては、肩の荷が降りた、それでいて、感謝で一杯の晴れやかな瞬間だった。ほどなくして、父は逝った。けれど、あの命をふり絞ったような「ありがと」は、今も響いている。