ホーム > 2008年度銀賞受賞作品一覧 > 2008年度銀賞

八月初旬といえば、茹だる暑さ、呼吸をするだけでも大変な時、泥沼の中から淡いピンクの花を咲せる「蓮花」を、一本一本丁寧に摘みとる仕事を始めて、早二十年になる。
夜の明けきらぬ早朝から、身の丈程の葉茎が林立し、足元はもつれ迷路の中、露を蓄えた大きな葉は容赦なく体を濡らし、巣を追われた水鳥は、けたたましい啼き声でバサバサッと、飛び立ちまるでジャングルの様である。とても清廉な蓮花の育つ所とは思えない。
今を盛りと咲き誇る花、明日を待ちつゝエネルギーを貯える蕾、咲き終えて蓮台にと!このように現代、過去、未来と花の姿が変化し、命あるもの全ての栄枯盛衰の因果を表わす花だと昔から珍重されてきた由来である。
齢を重ねて、「もう、来年は止めときましょナ。」という私に、「いいや、命ある限り頑張るで!!」と答える夫。汚れに染まらぬ清楚な花の魅力に惹かれて、使命すら感じつゝ汗を流す老夫婦の心の通い合うひと時である。