89歳の挑戦
「少し長く生き過ぎてしまった」これが私の口癖だった。
主人も兄弟も友人も、そして息子までも。みんなみんな天国に行ってしまった。「私は仕事と結婚したと思って」と高らかに宣言していた孫娘から、ある日突然「結婚します、つきましてはハワイで結婚式をします。ぜひ来て下さい」との連絡。死ぬ前にハワイに行きたい、と幼い彼女に呟いた事を覚えていたのかしら。
「ご招待ありがとう。でも・・・」胸の高鳴りに反するように押し寄せる不安。
歳をとり過ぎている、迷惑をかける、飛行機が怖い。何度も返答に躊躇する私に孫娘は「飛行機落ちたら、みんなで一緒に天国行けるね」なんて、にっこり笑っている。どんなに御託を並べても、「イエス」以外の返答は受け付けないと言わないとばかりに。そして私はハワイに旅立った。89歳の挑戦だった。
そして無事に帰国し、今はその思い出を胸に、「少しは長く生きてみるものね」と呟く自分がいる。
敬称略